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腎生検とは?

腎生検とは何ですか?

蛋白尿、血尿、腎機能低下のある患者さんにとって最も相応しい治療法を決定するために、尿を作っている腎臓の一部の組織をとり、顕微鏡で評価することが必要になります。「腎臓から組織をとる手技・操作」のことを「腎生検」と呼んでいます。
 

腎生検の目的は、3つあります。

  1. 正確な組織診断を得ること
  2. 病状の見通しを予測すること
  3. 適切な治療法を決定すること です。

どのような時に腎生検が必要になるのですか?(腎生検の適応は?)

腎生検が必要になるのは主に次のような場合です。

  1. 血尿が持続し、進行する慢性腎炎が疑われる時
  2. 1日0.3~0.5g以上の蛋白尿がある時
  3. 大量の蛋白尿、浮腫が見られる時(ネフローゼ症候群など)
  4. 急性進行性腎炎が疑われる時
    【急性進行性腎炎とは?】
    血尿、蛋白尿が存在し、数週から数ヶ月で腎臓が働かなくなる腎炎ですが、早期発見、早期治療で治る患者さんもいます。
  5. 原因不明の腎不全で、まだ腎臓が普通の大きさの場合

腎生検を行わない腎臓病はあるのですか?(腎生検の禁忌は?)

腎生検を行わない場合は次のような場合です。

  1. 長期間にわたる腎機能の低下があり、既に腎臓が縮小している場合
  2. 多発性のう胞腎の場合
  3. コントロールできない出血傾向、高血圧、腎及び腎周囲の感染がある時
  4. 腎生検中の指示や、腎生検後の安静が守れない可能性がある時
  5. 患者さんやご家族のご了承やご協力が得られない時

腎生検はどのようにして行われるのですか?

大きく分けて、2つの方法があります、病室あるいは病棟で行うものと手術室で全身麻酔を行って実施するものです。
 

【超音波ガイドでの針腎生検】

  1. 患者さんはうつぶせになります。
  2. 超音波を見ながら腎臓の位置を決定します。
  3. 痛み止めの注射をした後に、背中から細い針を刺します。
  4. 針が腎臓の上に達したところで、息を止めていただきます。
  5. その瞬間に腎臓の組織を採取し、針を抜きます。この操作を2~3回繰り返します。採取する腎組織は、太さは鉛筆の芯ほどで長さは1~2cmくらいです。
  6. 終了すると5~20分間くらい圧迫して出血を止めます。
  7. 仰向けになり6~12時間のベッド上安静が必要となります。

【開放腎生検】

  1. 手術室で全身麻酔のもとで腎組織を採取する方法です。
  2. 皮膚を切開して、腎臓を直接確認して採取します。
  3. 確実に止血をしてから皮膚を縫合します。
    全国的に多くの施設では、超音波ガイドでの針腎生検が行われています。ただし数施設では開放腎生検を主体に行っています。
  【超音波ガイドでの針腎生検】 【開放腎生検】
 検査の場所  病棟あるいは検査室  手術室
 麻酔  痛み止め(局所麻酔)  全身麻酔
 検査後出血の危険  100人中2人  より少ない
 輸血の危険  1,000人中2人  より少ない

腎生検は難しい技術なのですか?

超音波ガイドでの針腎生検は、訓練の必要な検査ですが、超音波で腎臓の位置を確認して行いますので、昔のようにX線写真を元に盲目的に針を刺していた時代よりは、格段に安全な手技になっております。ただし、肥満体形の方や筋肉質のスポーツマンでは、腎臓の位置が確認しにくいこともあり採取が難しくなります。数回刺して採取できない場合は、それ以上の危険を侵さないようにしています。

採取出来なかった場合、あるいは採取ができたが、最も必要な糸球体が含まれていない場合は、再度検査の予定を立てることもあります。臨床症状・検査所見、患者さんの意向を踏まえて、再度超音波ガイドでの針腎生検を行うか、あるいは開放性腎生検を行うか、あるいは腎生検を行わないかを判断することになります。

腎生検の利点は何ですか?

次のような利点があります

  1. 光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡等により詳しい組織診断の情報が得られ、腎臓病の診断ができるようになります。
  2. 腎臓病の治療法では、様々な副作用が起こる事もありますが、正確な診断を行うことで、治療法による危険性を回避する事ができるようになります。
  3. 特殊な治療により腎機能の回復が期待できる事があります。
  4. 腎臓病の今後の見通しがつくことにより、出産や職業の選択等人生設計ができるようになります。

腎生検の合併症や危険性は何ですか?

日本腎臓学会の平成10~12年の集計によりますと、日本全国で1年間に約1万人の方が腎生検を受けています。軽い出血等の合併症が、100人あたり2人程度(1,000人あたり20人程度)で生じます。すなわち98人の方は特に問題なく終了しています。

輸血や外科的処置を必要とする方は、1,000人に2人程度です。すなわち、998人の方では特に大きな処置は必要ありません。最近年間で不幸にして亡くなられた方は2人おりますが、1万5千回の腎生検で不幸にして1人亡くなられるという危険度です。通常の腎生検の手順で行えば、かなり安定した検査法であることが分かりました。

合併症があるとどのように対処しているのですか?

痛みが強い場合は、痛み止めで対応します。
その間に出血が続く場合は、腎臓の動脈に細い管を入れ、内側から出血を止める操作を行います。出血が続いていると血圧が下がることもあり、輸血が必要と判断されれば、輸血を行うことになります。

出血が巨大であれば手術により除去することも稀ながらあります。また最悪の場合は、これまで腎臓を取り除く事もありましたが、出来るだけ腎臓を温存する方針で対応しています。緊急時に備えて輸血の同意が必要となります。宗教上の理由あるいは個人的な考えで輸血を拒否される方は、あらかじめお申し出ください。

腎生検が終わったら何をしてもいいのですか?

血管の豊富な腎臓に針を刺した後は、圧迫して出血を止めますが、その後も安静が必要です。検査終了後6時間くらいは仰向けの姿勢で、穿刺を刺したところに砂嚢をあてて、絶対安静を守っていただきます。12時間の安静が必要です。
検査後、最初の尿が眼で見て血尿で無ければ安静を解除します。血尿の場合は、血尿が消えるまで安静入院となります。
腹圧をかける動作(しゃがんだ姿勢での排便、重いものを持ち上げる等)や、激しい運動は、2~3週間は出来るだけ避けてください。
血尿や痛み、発熱等がある場合には、ご連絡ください。
一方、安静にしすぎると下肢の静脈の流れが悪くなり血栓(血液のかたまり)が出来やすくなります。血栓が肺につまると急に胸が苦しくなったりしますので、注意が必要です。

不明な点やご質問がありましたら、ご相談下さい。

 

  • 本説明書は日本腎臓学会誌に掲載された「腎生検ガイドブック」を基に作成したものです。